永劫の罪人 光の咎人
 次期の教皇に定められてから、ずっと心に秘めていた大望。
 王の手記を見つけたとき、ハミルならば望みを叶えられると思った。

 そして――死人還りの秘薬の作り方を探した。
 技法を見つけたとき、大望は夢ではなく、現実に浮上していった。

 ライラム教は本来、いかなる理由があろうとも、生と死の流れに逆らってはいけないという教え。

 それをすり替えるために、古の経典が見つかったとして、秘薬の技法をライラム教の教典に紛れこませるのは容易かった。
 生死を行き交うことに触れた部分は、ほんの少し言葉をつけ足し、『生死の流れを、むやみに逆らってはいけない』と意味を変えた。
 過去に秘薬が使われた事例もでっち上げ、信憑性をもたせた。

 当時は首をかしげる者もいたが、今ではこの教えが浸透し、僧侶の誰もが疑っていない。
 そして秘薬を作れるだけの法力を持つ者を根気よく育て、力を身につけたのがロンドだった。秘薬を作るためだけに、次期教皇の肩書きを与えたようなもの。

 ヴィバレイはハミルに近づき、濁った目で笑いかける。

「ハミル殿なら、ロンドを意のままにすることも容易だろうて。どうかね、悪い話ではあるまい? 貴殿の居場所は教会しかない。教皇として育てられ、教皇として生きてきた貴殿に、教会を離れて生きていく術などあるわけがない」

 しばらくハミルは沈黙し、ヴィバレイを見つめ――抑揚のない声で「わかりました」とつぶやいた。

「どうぞ私をお好きに使ってください。私にとって百年後の世界など、何の意味もありませんから」

 あきらめにも似た言葉を吐きながら、ハミルは微笑む。
 しかしそれははかなげで、今にもこの世から消えてしまいそうな笑みだった。
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