恋歌 〜secret love〜
高校最後の文化祭は、本当に目まぐるしく過ぎていった。



やり始めてから気付いたんだけど、飲食店の企画はかなり人気があるらしい。



少し足を休める人。

お昼でもないのに、がっつり食べる人。

……あたし達の衣裳を、見に来る人。



理由はみんないろいろだけど、客足が途絶えることはなかった。



綺麗に並べてテーブルクロスをかけた机は

普段、授業を受けてる机には見えないくらい可愛らしくて、賑やかだ。



あちこちから飛びかう注文にバタバタして

今はもう引退した部活の友達と話して

恥ずかしかったけど、みんなで写真を何枚も撮って……


そうしてるうちに、気が付いたら自分の仕事は終わっていた。



……そう言えば、頼城先生と今日は1回も話してない。




今日の先生は、白いシャツにいつもの黒のスーツ。


副担任だから、あたし達と同じように接客をしたり、裏で調理を手伝ったりしてた。



そんな先生の姿を、あたしはときどきこっそり眺めることしかできなかった。




とにかく

あたしにとっては明日のステージが本当の勝負だ。



全力のあたしの気持ちを、言葉とメロディーに乗せる……



賑やかな教室を眺めながら、あたしはそう、自分に言い聞かせた。
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