恋歌 〜secret love〜
「そうか、ここだったか……」
……家に着いた――――
玄関の辺りを少し過ぎたところで、あたしの言葉に反応したみたいに先生が車を止めた。
「荷物、降ろそうか……」
先生は、あたしに向かって微笑むと、シートベルトを外してドアを開けた。
ばたんっという音に合わせて、溜まっていた水滴が窓を伝う。
「え……先生、濡れちゃうっ!」
運転席のドアが閉まるのと入れ替わりに開かれた後ろのドアを少しだけ振り返ってから
あたしは慌てて自分のシートベルトを外して、ドアを開けた。
「すみませんっ!先生、スーツ……」
先生の立つ方に回って、軽く頭を下げる。
彩乃が巻いてくれた髪の上で、軽く水が跳ねた。
「このくらいなら大丈夫。それより、奏も濡れるから急がないとな。
……とりあえず、これ」
手渡されたお弁当箱の入った鞄を、片手にかける。
腕に持ち手を通せば、家に入るまでくらい何とかなりそうだった。
空だから軽いしね。
「これで全部だな……。大丈夫か?」
「はい。送って下さって助かりました。ありがとうございます」
「いや、俺こそ、こんな時間まで付き合ってくれてありがとう。楽しかったよ」