恋歌 〜secret love〜
にっこりと微笑む先生を、街灯が照らす。
そこまで強くはないけど、コンスタントに降り続ける雨が、先生の頬を濡らした。
たぶん、あたしの頬も……――――
「あたしも、楽しかったです。先生がいたから、今日だけじゃなくて、この1年間ずっと……。
もしも先生がいなかったら、勇人以外のみんなとあんなに仲良くなることも、受験であんなに頑張ることも……文化祭で歌うことも、なかったと思うから。
本当に、感謝してます……」
頬を上げて、先生の顔を見た。
先生の頬を伝うしずくが、少し涙みたいにも見えて……
街灯できらっと光る。
あたしのと違って、先生のそれが涙じゃないことはよくわかってるつもりだけど……―――
「そう言ってもらえると、俺も嬉しいよ。ありがとう」
先生が、ぽんっとあたしの頭に手を乗せた。
雨で冷えてるはずなのに、何だか頭が熱くなった気がする。
「髪、だいぶ濡れてるな……。風邪引くと大変だから、早く家に入った方が良い」
頭から離れた手を寂しく感じながら、あたしは静かに頷いた。
そのまま見上げた先生の顔は、やっぱり少し歪んで見えて……
本当に、都合の良い自分の思考回路に、少し呆れる。
「頼城先生……。1年間、本当にありがとうございました。
……また、連絡させて下さい」
「あぁ、待ってる」
にっこりと笑った先生にがばっと頭を下げてから、くるっと背を向けた。