恋歌 〜secret love〜

「皆さんご存知かと思いますが、今回のオーディションではこの20人の中からグランプリ、準グランプリ、特別賞を決めます」



受付を終わらせて、大きな控室で待っていると、女の人が今回の説明をしに来てくれた。


グレーのスーツを着こなした女の人は、何だかすごく格好良くて……


その説明を聞くみんなの表情も、ものすごく格好良かった。



「弊社では、この形式のオーディションを定期的に今後も開催していきたいと思っています。

第1回の今回、皆さんの中から素敵なスターが生まれるように、こちらも精一杯力を尽くしたいと思いますので、よろしくお願いします。

順番にヘアメイクと着替えをしていただいた後は、こちらの控室で、またしばらくお待ち下さいね」



にっこりと微笑むと、その人は部屋を出て行った。



そのせいかな?

部屋の中の空気がすっと軽くなった気がする。



それでも、今日初めて会った人ばかりのこの空間は、少し……いや、だいぶ気まずいものがある。



誰か、話せそうな人でもいないかなぁ……。



「押端奏さん、こちらへお願いします」



そう思って溜息を吐いた瞬間に、背中の方であたしを呼ぶ声がした。



「あっ、はい!」



とにかく、頑張らなくちゃ……!



がたっと立ち上がって、あたしは声の先へ進んだ。
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