恋歌 〜secret love〜
「推薦者の方は……匿名希望ということになっていますので、お話することができませんが……。
応募していただいた“恋歌”の映像を見て、是非、あなたには次のステップに進んでいただきたいと思いまして。
次は公開審査を予定しているのですが、今、手元にスケジュールを確認できる物はお持ちですか?」
「あ、はいっ! すぐに確認しますっ」
未だに、自分の置かれた状況についてはよくわかってない。
だけど、何となくだけど
ものすごくどきどきして、わくわくして……
あたしは、慌てて鞄から手帳を取り出した。
「本当に、来ちゃった……」
いつもは絶対に降りないような大きな駅で電車を降りて
地図を見ながらあわあわと辿りついた大きな建物。
建物の一番上には、テレビ局のロゴマークがどんっと掲げられてる。
緊張するなぁ……――――
あれから2週間。
何もわからないまま、とりあえず高崎さんに言われた通りにテレビ局に来た。
……公開審査って、テレビの収録ってこと?
電話がかかってきた後に歌の先生に確認したけど
RNCコーポレーションも、そこがやってるオーディションも、ちゃんと本物だったらしい。
大丈夫かな、あたし……――――
大きく息を吐き出してから、あたしは無駄に大きな自動ドアを通り抜けた。