初恋の行方〜謎の転校生〜
「え?」


思わず私は顔を上げた。


「目を腫らして……。泣いてたのね?」

「う、うん。でも、何で……」

知ってるの?

「彼氏、柏木隼人君も随分しょげてた感じだし、あなた達、よほど酷い喧嘩をしたのね?」

「お母さん、彼を見たの? いつ? どこで?」

「ついさっきよ。道ですれ違ったけど、彼があまりにしょげた感じだったから、声を掛けそびれちゃった」


私は慌てて壁掛けの時計を見た。正確には分からないけど、隼人さんと別れてから1時間ぐらい経ってると思う。


彼はあの後、帰らずにずっと家の前にいたんだ……


そう思ったら、彼への申し訳なさと愛しさで、胸がキューッと締め付けられた。


「彼を家に入れた事、今回はお父さんには黙っててあげるけど、あまり感心しないわね。私がいる時だったらいいけど」


「ごめんなさい。でも、これからは有り得ないから、安心して?」


「それはどういう事?」

「彼と、別れたから」

「まあ……!」


母に打ち明けた途端、涙がジワッと出てきてしまった。あんなに泣いたのに、まだ涙は涸れてないらしい。


「美咲……」

母が何か言い掛けた時、玄関のチャイムが鳴った。


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