初恋の行方〜謎の転校生〜
「悠人は、生まれつき心臓に欠陥があったんだ。だから過激な運動は出来ないし、しょっちゅう発作を起こしては、入退院を繰り返してた。知らなかったのか?」


「知りませんでした。でも……」


思い当たる事なら、いくつもあった。


悠人君は休みが多く、体育の授業はいつも見学してた。

体育祭に参加してなかったし、修学旅行も欠席だった。

肌の色が抜けるように白くて、走る姿を見た事がない。


少し考えればすぐ分かる事なのに、私は全く気づいていなかった……



「祖父さんは、お袋に経済援助をするから、俺を寄越せと言ったらしい。そしてお袋と親父は、仕方なくそれを飲んだってわけだ」


柏木君は淡々と話しているけど、幼くして離れ離れにさせられた柏木君と悠人君、そして両親からも引き離された柏木君を思うと、私は目頭が熱くなっていた。


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