One STEP
「あなたの声が欲しいです」
突然手を握られた。
そうして言われた、この一言。
は…?
ふしゅう…と。
力ない音と共に口から二酸化炭素諸々が吐き出される。
な…なんじゃそりゃ…?
あたしはきっととてつもない間抜け顔をしていることだろう。
そう予想できるほど、状況理解不能だった。
意味が分からない。
これじゃあこの前のあの男の先輩と一緒じゃないか。
誰もが考えなかったであろうその先輩の言葉に、一瞬にして野次馬たちの空気が変わる。
しかしあたしはそんなガラッと変わった空気に気づけないくらい、言葉の意味を必死で理解しようと試みていた。
うーん…謎すぎて吐きそうさ。
かなり目立っているあたしと先輩が更に注目を集めたことに暫し経って気づいたあたしは、ハッとして周りを目だけ動かして見た。
ほ…ほっといてよ!!
なんだか急にものすごく恥ずかしくなってきた。