One STEP
あたしは1人、はぁはぁと息が荒かった。
先輩は「大丈夫?」と、あたしの顔を覗き込んできては不安そうな顔をする。
あなたのせいです、なんてとてもじゃないが言えそうにない。
間近にある先輩の綺麗な顔。
肌なんてありえないほどきめ細かかった。
ニキビなんて無縁だな。
ゆっくりと深呼吸をして呼吸を整えたあたしは、少し小さな声で質問した。
「あの…用件はなんでしょうか…?」
そうそう、と用件を思い出したのか、パチンと手を合わせて笑った先輩は、綺麗の他に可愛いとも思えるんだってことを知った。
「どうしても演劇部に入ってくれないの?」
その質問…
避けたかったけどやっぱり無理だった。
こんな綺麗で可愛い先輩があたしの用なんて、考えられるのはこれを言うためとしか考えられない。
そっかそっかそれだよね…。
ある意味良かったけど良くないよ…。
あたしの視線はチラチラと天井を泳いだまま、えぇーっと…と言葉を濁す。
なんだか断りにくい。
藤田先輩みたいな先輩だったら、無理です!ってハッキリに言えるけど、この先輩みたいな綺麗で素直な先輩に言われると…。
チラッと先輩の表情を伺う。