One STEP
「あたしは荒木さんを信じています」
弥生先輩の綺麗な声が廊下に響く。
あたしは少し上がった腰を、ペタンと下ろした。
先輩の声が脳内で響き渡る。
〝荒木さんを信じています〟
もうやめてと飛び出したい。
そこまで信じてもらえるほど、あたしは出来た人間じゃない。
弥生先輩の言葉をきっかけにゆっくりと頬に伝わる涙。
泣きたいのはあたしじゃなくて、弥生先輩のはずなのに。
「信じてるって?」
そう言って鼻で笑う先生。
あたしはその先生に怒りを覚えた。
だか先輩は臆することなく言葉を続ける。
先輩の瞳はしっかりと先生を捕らえていた。