アイシング、マイラブソング
どっくん


どっくん


いざの時の、
緊張という人間の生理現象はどうしようもないものだ。


どっくん


どっくん


この心臓の鼓動、
イヤじゃない。

ちょうど波の音とリンクして、心地良い。


どっくん


どっくん


―よし


「ねえ、藤堂」


「ん―?」


「藤堂は、いま…」


言葉が詰まった。


―この期に及んで探り入れるなよ…好きって言うだけだろうが…


後にも引けず、そのまま続けた。


「いま好きな人とかいる?」


千架は海へ顔を向けたまま、動かない。
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