【完】チーズ男とあたりめ女
「さん付け禁止」



「で、でも…っ」



動き出した悠さんは、私が“呼び捨ては出来ない”と言わんばかりに首を振ると、スピードを速めた。



「は…るか…ッ!!」



私が初心者だと、忘れてそうな勢いで、咄嗟に名前を呼んだ。

スピードは緩み、やがて止まる。

私は息を吐きながら、彼の腕を掴んだ。



「悠…」



「もう限界だな;;」



苦笑して、私を見下ろす悠さんは滴る汗も気にせず、フィニッシュを目指す。

私は自分で、汗に涙が混ざってたなんて気付かなかった。

痛みにも。

幸せがあるなんて、初めて知ったんだ。




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