【長編】雨とチョコレート

4月 - 1

「今年も同じクラスだね、れい君」

昇降口の入り口に張り出されたクラス分け表を見ていると、しのが隣に来て言った。

「ここまで同じクラスが続くなんて、すごいね。
連続9年なんて、これ、記録だよ?」


ニコッと笑うその表情がかわいくて、心臓が跳ねた。



俺、真山零(まやま・れい)は、今年でこの隣にいる女の子、櫻史乃(さくら・しの)と同じクラスになること9回、そして、片思い歴も9年目に突入した。



話が分からない人のために言うと、俺たちは9年前――小学1年のときに出合って、雨の日だけは一緒に帰るという奇行をしていて、今では親友といっても過言ではないくらいの仲になってる。


――少なくとも、しのはそう思ってる。


初めて見たときから好きで。

でも、そんなこと言えなくて。

だらだらだらだら一緒に帰ったりしてるうちに、気がついたら9年も経っていたというわけ。



はぁ・・・・。


深くため息をつく。
いつまで、この”友達”の位置の居心地の良さにつかまっているのか。



「大丈夫?」



しのは相変わらず俺に優しい。



大丈夫だよ、って返すけど、本心ではいつだって葛藤がある。


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