【長編】雨とチョコレート
「っはぁぁぁ・・・・・・」


昼、弁当の包みをほどきながら俺は大きくため息をついた。

ちなみにしのは窓際の席に移って岬と一緒に飯を食ってる。


「なに、担任ヤだった?」

神崎が愛妻(彼女)弁当を口にほおばりながら訊いてきた。


「みんな当たりだって言ってンじゃん。だって、ゆりぴょんだぜゆりぴょん。超当たりじゃん?」

ゆりぴょんっていうのは去年、国語を教えてくれてた女の先生だ。

確かにいい先生で、俺だって文句はない。

「文句はねぇけど・・・」


また、はぁぁぁぁ、とため息をつく。


「あ、わかったかも」


俺はもう、皆まで言うな、という状態だった。

それでも、周りの目を気にしてか、小声で神崎は続ける。



「お前、まだしのちゃんと・・・・」
「いうなよ!」


神崎はニヤついて俺の肩を、ポンと叩いた。


「まぁだくっついてないのか。そうかそうか」


「・・・ほっといてくれよ」


「おまえなぁ・・・もう同じクラスとか言ってらんないぜ?
卒業したらあう理由なんてなくなる。
まだ4月だけど、4月なんてあっというまに3月になるし?
卒業なんてすぐ来るぞ?」

「・・・・わかってるそんなの。
もう、2回も一緒に卒業式迎えてるんだし・・・」


「あ、そうだったっけな。
・・・・ごめん」


でも神崎のいうとおり、本当に今年が最後。

そう考えると、焦りを感じる自分がいるのも確かだった。

神崎は知ってる。

俺がどれくらい前からしののことを好きなのか。

神崎は神崎で、岬とは中学からの同級で、そんときから付き合ってるらしいから、もう5年くらいになる。


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