見えないモノと、指の銃。
08.かげぐち君


「母さん!」


道を歩いていると、
前に誰かが立ちふさがった。
そして、母親を叫ぶように呼ぶ。

後ろに居るんだろうか、と、
道をあける感じに振り返りつつ端に寄ってみた。

そして見えた、歩いてきた道には…………誰も居ない。


新手の変質者だろうかとか、嫌な予想をしつつ、再び前を向いた。

そこには男が1人。

彼の顔は、感動のご対面!みたいな表情で、目を潤ませてもいる。


……予想は外れますように。

そう願ったのもつかの間、男は再び叫んだ。

「母さん!」


その視線の先は、どこから見ても俺にしか向いていないし、道は狭い。
通してくれそうにないから、回避不能。
仕方がないから応対してみる事にした。


「……誰ですか?」

そう尋ねると、嬉々とした声で答えが返ってくる。

「あなたの子どもです!」


……変質者かどうかは置いておいて、
とにかく変な人だ、この人。


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