氷狼―コオリオオカミ―を探して
神様お願い

あたしの願い事をもう一つだけかなえて


「チェイサーの願い事を覚えているか?」


イタチの問いに他の白魔達がうなずく。


「ああ。あれは忘れようたって忘れられない」

「あんな願い事をしたのは後にも先にもチェイサーだけだ」


どういう事?


「トムボーイ、あなたの真の名は『ハルカ』だったね?」


あたしはうなずいた。


「十の冬の前、チェイサーはあなたのために願い事をした」


「それは知ってる」


「たいていの人の子は『家に帰りたい』と願う。時々、父や母の病が治るようにと願って妖魔になる孝行者もいる。だが、彼の願いは前代未聞だった」

イタチはあたしを真っ直ぐに見た。

「彼はこう願ったのだよ。『ハルカが、やりたい事を何でも自由にできるように』――と」
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