氷狼―コオリオオカミ―を探して
「気遣いなら無用だぞ。人の子はすぐに自分を縛る」

「みんなが好き勝手してたら目茶苦茶になるよ」

「そうだとしてもそれがどうした?」

「あたしは――あたしは自分に誇れる自分でいたいの」


チェイサーはまた少し黙った後

「それがお前の本当の願いなら」

と言った。


「本当だってば! 今はこれでいい」

「では、今は氷狼を追い立てよう。だが後で必ずお前に捕まえさせてやる。約束する」

「うん」


妖魔の約束は、たぶん人間の約束よりも重いような気がする。


チェイサー

あんたは自分で自分を縛りつけるような人間の世界が嫌いだったの?


あたしは語らないチェイサーの背中に無言で問いかけた。


そして

そこのあんた


あたしは高みにいる氷狼のリーダーを見上げた。


あんたはこの事態をどう収める気?
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