氷狼―コオリオオカミ―を探して
無言の問いかけに答えるように氷狼のリーダーがあたしを見た。


「あんたはただ見てるだけ?」

あたしは嘲るように言った。


琥珀色の目があたしを見た。

その目の中にあたしは英知の光を見た気がした。

あいつはあたしの言葉を理解している。


低い唸り声 ひとつ


雪が降る夜の空に

ガラスと鉄とコンクリートでできた谷に

咆哮と共に大きな氷狼が飛び降りた。


「来るぞ、チビ」

チェイサーの声は心なしか楽しそうな響きさえあった。


「いいよ」

あたしは松明を握りしめ、チェイサーの体にしっかりとつかまった。


チェイサーは馬の脇腹を蹴ってリーダー狼の方に向かって行った。


あたしの持つ松明から炎が滴となって流れていく。
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