25番の背中
『へぃへぃ、わかりやしたぁ〜。奈緒はしっかりしてますねぇ』
少しスネながら言う父
きっと、受話器の向こうでは口をとがらせながら言っているんだろう
想像すると 笑ってしまいそうになる
『あっ、そう言えば4時までに岡山の知り合いの家に行くんだった!』
「へぇ〜……」
トラックの時計を見ると、3時15分
ここからだと、市街までは早くて40分。少し急いだほうがよさそうだ。
「もう、15分 きてるよぉ」
『大変っ!急ぐから電話切るねッ!』
そう言うと父は、一方的に電話を切った。
受話器から
プー、プー、プーと音がなる
自分から掛けてきたくせに…
まったく………
私は少し呆れながらも、
電話を閉じ またポケットにしまった
でも、岡山の知り合いって誰なんだろう………
私 会ったことあるのかな……?
そんなコトを思いながら、外を見ると すでに父の車は見当たらなかった。
父の電話からしばらく経ったとき
またもや、渋滞になった。
また渋滞かぁー……
何々、『3キロ先 事故発生』?
渋滞情報の電磁式の看板を見ながらため息をつく
この分だと、引っ越し先の家に付くのは暗くなってからになりそうだ。
突然の渋滞に苛々しながらも
窓の外の見慣れない景色を見ながら心を落ち着かせる。
その時 運転をしていた引っ越しセンターの人が話しかけてきた
『ね、ねぇ… あの車って…』
突然 話しかけてきた引っ越しセンターの人の顔をみると
眉を潜め 目は信じられないものを見たかのように見開いていて
何かを指差していた。
私は指差している方向に従われるように首を向ける
その指差す先には
無惨にも潰れている父の車があった―――……