25番の背中
トンネルを抜けてからというもの
雨は衰えるどころか、さらに
激しさを増していた。
雲のせいか、光はさえぎられ
まだ 昼の3時前だと言うのに
辺り一面 薄暗く霧(キリ)が立ち込めていた
私は窓ガラスごしに山の間から小さな民間や畑が見え
市街まではまだ距離があると認識した
すると、揺れる車体とは違い
規則正しくジーパンのポケットの中で振動するものに気が付いた
ケータイか―――…
そういえばマナーにしてたっけ…
ポケットから携帯電話を取り出すと液晶には
『お父さん』
という文字が映されていた。
「もしもし――…」
『奈緒!やっと岡山に入ったぞッ!!』
「……………。そんなこと言うために電話してきたの……?」
『えっ、だってぇ〜…』
「……………はぁ…、どうでもいいけど ちゃんと前見て運転してよ。後ろ付いて行ってるんだから…」
父は私の乗っているトラックの前の車を運転している
白いオデッセイが、トラックからだと小さく見える
『だって、お父さん 一人で 運転しててヒマなんだもん〜』
「だからって、運転中に電話かけてくるのは どうかと思うよ。しかも、外 雨なんだから」
受話器の向こうから
『ちぇっ』と小さく舌を鳴らす音が聞こえる
父は私が唯一 まともに会話出来る男性で
母が亡くなってから、ずっと一人で私の面倒をみてくれた。
だから、大切で
だからこそ、雨の運転で事故にあってほしくないんだ。