名前も忘れてしまった



――キィィ…



ドアを開いた途端、気持ちの良い風が出迎えてくれた。



私の髪の毛がなびく。



予想通り、屋上に来たら少しだけ気持ちが良くなった。



下の校庭からは、運動部の掛け声。



「………」



私は黙って風を感じた。



5月の涼しくも、ほんの少しだけ暖かい。



気が楽になる、そんな気がした。



私はゆっくり、一歩ずつ前へ進んだ。



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