名前も忘れてしまった



先生の言葉は耳に入らなかった。



よく分からないぐちゃぐちゃした感情が、心の中を支配する。



「………」



私はその場で黙り込んだ。



どうしたらいいのか…。冷静さがどんどんなくなっていく。



誰が書いたのか、誰がこんなこと思ったのか…。



いや、書かないだけで皆そう思っているとか……



たくさんの不安が押し寄せてくる。



なんとも言えない……ただ、悲しくなる。



涙が、出そうだ。



「私、帰ります。」



そう言って紙を机の上に置き、私は足早で職員室から立ち去った。


「町谷っ!」



先生のそんな声が聞こえたけど、振り返れる気分じゃなかった。




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