逆転リバース
「いつも言ってるように、バレるな」
社長の言葉に、私は背を伸ばした。
椿はもう携帯電話を操作して遊んでいた。
「収録はいつ?」
「明後日の朝だから、遅刻すんなよ」
社長はそれだけを言うと、私たちを追い払った。
「話さないようにする?」
「別に、付き合ってるって思われても良いんじゃないか? 同じ事務所だしな」
「付き合ってる、設定?」
「嫌か?」
「ううん。私たちって付き合ったっての体感したことないなぁって……」
出会って花火を見に行って、ムードに流されて……。
互いに芸能人だった私たちは話題になるのを避けるのに必死だった。