記憶 ―流星の刻印―
決して老いたから事務作業員で居る訳じゃないからね、と声を大きくした。
こだわるわね、花梨さん。
「…危険なのよ、今。氷上の石碑の内容を巡って、色々と四彩華の国全体が…」
「――おい、花梨っ!!」
太磨が珍しく、
声を張り上げていた。
それは、つい花梨さんが口にしてしまった、きっと一般人の私が聞いてはいけない事情だったんだと思ったわ。
でも、花梨さんは続けたの。
「緊迫してるの、一般人の知らない所で。均衡が崩れない様に、力を持つ『妖術師』の四彩華の四国間での移動は、現状では数ヶ月前から禁止されている。特例でもない限りね?」
「――花梨っ!!お前っ!!」
割って入ろうとした太磨。
その動きを花梨さんが止めた。
妖術を使ったんだと分かった。
手のひらを太磨に向けると、
太磨は金縛りにあったかの様に、体を痙攣させていた。
「妖術師の行動には、何かと制限も付いてくるわ。更には、何かにつけて力を求める連中に狙われる危険もあるの。」
「……大変なんですね?」
そう話を合わせながらも、私は太磨が心配でチラチラとそっちを見ていた。
花梨さんが何を言いたいのか、
分からなかった。