好きな人は、
そして動揺を抑えるためにレモン飴を口に入れた。
潤くんに笑顔を振り撒きながら話しかけるあの子は校内でも可愛いと有名だから、あたしも顔を知っていた。
一つ下の後輩に当たる彼女は、潤くんが所属する野球部のマネージャー。
ていうか後輩なのにさり気に潤くん呼びとか、まじ侮りがたいんですが。しかもなんだ、あの上目遣い。くっそ、可愛いな………って何考えてんのあたし。
「潤くん、良かったら新しく出来たレストラン一緒に行きません?」
ブフッ
積極的な彼女のお誘い発言にレモン飴を吹いたあたしは思わず両手で口元をおさえた。そして新しくもう一個、飴を口に押し込む。
え、もしかして潤くん狙ってる系かな。もしそうだったらどうしよう、てかなんだこのドラマチックありきたり少女漫画的展開。
あたしにライバルなんて必用ありませんよくっそー!
「え、ど、どうしようかな……」
しかも潤くん断らないし。
そりゃそうか、だって潤くんも一応男の子……あんな可愛い子に小首傾げられたら………
いや、でも潤くんって女の子あんまり得意じゃなさそうだし……ましてや二人っきりなんて断るに決まってる。うん、ポジティブポジティブ。
「すっごく美味しいって評判なんですよ?」
ねっ?と上目遣いを維持しながら潤くんの腕に絡み付く彼女に、軽く殺意を抱くあたし。
しかも少女漫画お約束のぶりっこキャラなあの行動、普通なら鳥肌モノなのに様になってるのがちょっと悔しい。
「うーん……じゃあ、ちょっとだけ……」
「ほんと?嬉しー!!」
ブフッ
まさかの放課後デート決定の結末に、あたしは本日二個目のレモン飴を吹いた。