好きな人は、
視線を、ゆっくりと唐揚げから上へと移す。
人が、いた。男の人。
色素の抜けた、ふわふわパーマ。
耳についてるピアスの数は、ぱっと見ただけではわからない。
オマケにバリバリ校則違反の、派手な蛍光イエローパーカーがチカチカする。
……背は…お世辞にも高いとは言えないな、うん。
1年かな、2年かな、3年かも。
「ちょっと、どいて。」
さっきと同じ言葉が、また聞こえた。
「…え、わたし?」
「…しか居ないじゃん。」
うわぁ、人に話しかけられたの久しぶりすぎる。
興奮で体が熱くなり、思わず彼をじっと見つめた。
「……なに、何か付いてる?」
「…いっ、いえ何も…!」
笑いで誤魔化しつつ、わたしが体を壁に寄せると、彼は隙間を通って更に階段を昇り始める。
一段、二段、三階へと。
気が付くと、わたしは物凄い速さでお弁当箱を片付け、彼の背中を追っていた。
足音を聞いた彼は、ぎょっとした顔で振り向く。
「ちょっ…なんで付いてくんの。」
「あぁ、気にしないで下さい。」
「気にするわ。」
「いいからいいから。」
ニッコリ笑顔で流すと、彼は顔をしかめて再び階段を昇りだす。
…これは、神様たちがくれたチャンスだから、逃すわけにはいかない。
引かれようがどうしようが、女子のグループに入っていくよりかはこの見知らぬ人に近づく方が気が楽だ。
今だけは、チキンハートを捨て去って彼の背中だけを追う。