好きな人は、
「……え、今なんて言ったの。」
その日、わたしと三木先輩は非常階段の踊り場にいた。
そこは、初めて先輩と出会った場所。
いつも通り昼休みに屋上へ向かう途中、普段はわたしより後に現れる先輩がそこにいた。
屋上行かないの、と聞くと、今日はここで食べよう、と言われて踊り場でお弁当を広げている。
今日のメニューは、いつも褒めてくれる卵焼きと頑張ってチャレンジしたコロッケ。
先輩の感想を期待しながら、ルンルン気分でそれを食べる…………はずだった。
三木先輩がこんなことを言うまでは。
「だから、明日から教室で昼飯食べるから。」
手から、お箸が零れ落ちた。
「は?」
いやいやいやいや、何言ってるのアナタ。
思わず先輩が食べようとしていたわたしの特製コロッケ弁当を取り上げる。
「ちょっ、今食べようとし……」
「なんで!?」
口から飛び出た大声に、三木先輩は『うわ、うるさ。』と背中を反らす。
そんなのお構い無しでぐいぐい迫って顔を近づけると、肩を優しく押し返された。
「麻衣。」
そう大好きな声で呼ばれ、わたしの体は自然と固まる。