好きな人は、




「……ねぇ、なんかあたしに言う事とか無いの?」

「………ただいま?」



いやいや、ここあたしの家だし。


せっかく勇気を出して聞いたのに、彼からの返事はちんぷんかんぷん。しかもハテナマーク付き。

思わず溜め息が漏れた。




「そうじゃなくて…あたし達一ヶ月ぶりに会ったわけで……」

「………。あぁ、痩せた?」



ちげーよ。むしろヤケ食いで太ったっつーの。どこ見てんの。



再び返ってきた乙女心を微塵も理解してない言葉……しかも彼なりにちょっと考えたらしい言葉に、あたしはだんだん悲しくなってきた。



…あたし、ずっと待ってたのに。


奏からの連絡とか、いつ会えるとか、電話でもいいから声聞けるのとか、一分でも良いから触れられるのとか。

…それが叶うなら、もうこの際別れ話でもいいや、とさえ思って待ってたのに。



「……ごめんとか、ないの。」

「……俺忙しくなるから、って言わなかったっけ。」



言いました。ただし、メールで。

大学であったこととか、見てたテレビ番組とか他愛も無いメールの途中で、いきなり"俺忙しくなるから"って。


びっくりして、忘れるわけ無い。


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