誠-変わらぬ想いの果て-
「一君、薬飲んできた?」
「毎朝飲んでいる」
「さすが。じゃあ、あづさを連れてここから離れて」
「分かった。ここは大丈夫か?」
『誰に言っている(の)?』
自信満々に答えた二人に、斎藤も愚問だったと肩をすくめた。
あづさを奏から受け取り、足早にその場を離れていく。
それを確認した後、奏は桜の木を見たまま紫翠に問うた。
「私がここの結界を張る。腕は鈍ってないでしょうね?」
「それはこっちの台詞だ。お前こそ寝すぎで力の加減を忘れてないのか?」
『……………』
二人は顔を見合わせる。
『上等だ、コラ』
奏が無駄のない範囲で完璧な結界を張り、紫翠がこれまた無駄のない詠唱で完璧に風を操り桜を切る。
風神を崇める風戸の鬼と、雷神を崇める雷焔の鬼。
鬼故の人外の美しさを持つ二人の協力は滅多にない。
ないが故に、おそらく見られた者はしばらくは忘れられぬものになったであろう。
しかし、この場に他の観客はいない。
否、いないはずであった。