部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
「その手で、散々、辛酸を舐めてるんでね。内輪の話で申し訳ないが、それをする勇気は今のところ無いさ」

二人の会話を聞きながら、琢磨は、胃に熱い物が込み上げて来るのをはっきりと感じた。彼は、このままの状態が続くと、胃潰瘍になる事は火を見るよりも明らかだった。

「そこで、頼みが有るんだがね」

前沢がゆっくりと顔を上げて、亜矢子と琢磨の顔を交互に見た後、徐に話を始めた。

「突き崩さねばならないの案件は二つ。一つは密室の謎、もう一つは二十人の証人。これさえ分れば逮捕状は請求できるし、すっきり事件も解決する。それをするには、現役のこの学校の生徒である君達の力が必要だ。良く聞いて欲しい……」

そう言って人の良さそうな笑顔を、ちょっとだけ引きしめた前原は、これからの作戦に付いて、ゆっくりと語り始めた。
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