部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
琢磨は理事長室のほぼ中央に立つと、ぐるりとまわりを見渡した。

「何か変わった事は無いか?無くなってる物とか……」

「無くなってる物…わかんないよ、理事長室なんて入った事無いから元の状態がどうなってたかなんて知らないもの」

琢磨は亜矢子の言葉に、ちっと舌打ちして見せた。

「そうだよな。俺達に分る訳がないな……」

そう思った瞬間だった。

「誰だ?」

ちょっとどすの効いた声が静まり返った理事長室に響く。亜矢子と琢磨は、一瞬、びくっとしてから、二人揃って声の方向に振り向いた。そして、その人物を確認した亜矢子が呟く。

「前沢さん……」

「いかんな、まだ、ここは立ち入り禁止だよ」

微笑みながら近付いて来る前沢に琢磨が尋ねる。

「前沢さん……今、来たんですか?」

「ああ、ついさっき来たんだが、それがどうかしたかね?」

「沢村先生に遇いましたか?」

その問いに前沢は、ちょっといぶかしげな表情で答える。

「いや、誰にも遇わなかったが、それが何か?」
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