サヨナラいとしい子
ハルトは、焦って
アタシの口からショールを
取り上げようとする。



ダメよ、
ちゃんと彼女を誘うって
決心するまでは返さないわ。


アタシは、ショールを
しっかりくわえたまま、
抱えこんだ。



「どうしたんだよ、ココア、
それ返して、な?
頼むよ、破れるから」


ハルトは困っている。





アタシはまた眠りに落ちてしまった。



だってこのショールから
とてもいい香りがしたから。

きっとこの女の子はいい子だわ。

確信して安心した。


花のような、
ミルクのような、
甘くて優しい香り。


それと、ハルトの匂い。


ハルトったら、
くんくんしたわね?


手だけじゃなくて、
ハルトの顔の匂いが
ついているもの。



しかたのない子。

でも。
二人の匂いが混じって、
とても大好きないい匂い。


二人の相性もぴったりだわ。



きっと二人に子どもができたら、
こんな匂いがするのね。





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