甘く、優しく、ときには苦く
~樹side~


エレベーターが開いたと思ったら

「あ!!」


聞き覚えのある声。


相手の顔を見て、驚きを隠せなかった。



今日は、なぜかあんまり会いたくなかった鈴村 陽菜だったからだ。



昨日のことを気にしてるんだろうか?
それは俺にもよくわからない。

けれど、ちゃんと彼女の顔を見ることができなかった。



どうしてだ?

俺は、彼女に告白されてうれしかったはず。
なのに、それと同時に
酔っているだけだ
と思いこもうとしている自分がいる。

本当に、彼女が俺を好きなわけがない。
俺なんかを、彼女が好きになるはずない。



でも、それは彼女を疑うことになる。

疑いたくはない。彼女は嘘をつくような人間じゃない。


俺の心は矛盾の渦に包まれていた。






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