甘く、優しく、ときには苦く

「みなさん、回診ですよ~。」

石崎さんが、俺が部屋に入る前に声をかける。


俺は頭をさげてから部屋に入り
いつもどおり、右手前のベットの患者さんから診てまわる。



「こんにちは、岡田さん。」

岡田さんは、軽い肺炎。

「藤岡先生!相変わらずイケメンですね~。
うちの孫の婿に来てほしいわ!」

回診のとき、いつもこういわれる。

「ありがとうございます。
でも、お孫さんが嫌がるんじゃないでしょうか?」

確か、高校生だったよな。

30近い俺なんて、嫌だろう。

「そんなことないですよ。
今度孫が見舞いに来るから会ってあげてください。」

「ぜひ。では、聴診器あてますね。」

「はいはい。」

岡田さんは、そう言って体の力を抜く。

「はい、いいですよ。
異常はありませんね。」


でも・・・・
なんだか、少し体温が高い気がする。

「苦しいとかありますか?」

「大丈夫です。」

「そうですか。それでは、僕はこれで。」

「ありがとうございました。」



< 64 / 92 >

この作品をシェア

pagetop