九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】



「母は病院に運ばれたわ。

一命を取り留めたけれど植物状態で――…。

その時は事故と処理したものの、救急車を呼んできちんと治療をした一条と四井を恨んだりはしなかった。



でも、でも……!!!!」



三枝が、口を開いた。



「一条は、宍戸夏実の身体を、つまりは臓器を売ったんだ。

違法にな」



冷たい言葉だった。


「俺は2年前、違法な臓器売買をしているとして明共大学の一条について記事を書いた。

…けれど、一条は金を回して事実をねじ曲げ、闇に葬り去った。

報道は虚構である、なんて言ってな。

宍戸夏実はそうやって身体を売られて死んでいった。」



「うわぁぁぁぁ!!!!」




宍戸永楽が、耐えられないと頭を抱えて泣き出した。

夏実、夏実、と僅かに声が聞き取れる。



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