アダルトチルドレン
帰宅して携帯を見ると、沢山の指名客からのメールばかりだった…


携帯を開けば、誘いのメールや次回の出勤を聞かれるメールばかり…

はっきりいって、うんざりだった…

だけど、杏里には、がむしゃらに店で働き脚光を浴び、お金を稼ぐ事でしか自分の居場所がなかった…

別に、ブランド物が欲しいとか、高い服が着たいとかそんな為じゃなくて、お金を持ってない事が怖かった…

それもこれも、幼い頃から父親が病気でお金に困る母親を目の当たりにみてきたからだろう…

だから杏里にとって、お金がない事は一番怖い事だった…

決して大胆に使いたい訳でもなく逆に数百円の服を買ったり安い物を買うだけで満足だった…


ただ…、ただ、何か起きた時に持ち出せるお金がないのが不安だった…

そんな環境に育ったから仕方ない…

父親が入院している日々の中で、幼い杏里は母親の聞き役として育っていた…
だから、杏里は、家族の中で子供ながらに、何も出来ない自分が情けなくて、例えていうなら、リストラされたサラリーマンみたいな気持ちだった…

子供だけど、父親みたいな、上手く説明できないけれど、自分が頑張らなきゃ、頑張らなきゃって…
いつも思っていた。


今杏里は二十一歳だ…
水商売を始めたきっかけも、お金をてっとり早く稼ぎ、いつでも自分がお金では協力出来る状態でいたかったからだ…


自分の神経をすり減らしながら、偽りの自分を演じ、仕事をしている事で自分に安心感を与えていた…

怖いのは働いていない時間…月に数日の休みは不安感でいっぱいだった…

そうして仕事という物に依存していった…



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