夢色そよ風
全く変わらない物なんて存在しないんだって思ってたんだ。
でも、ここにあったんだね。

「キレイな声だね。」

いつかと同じ風が声を運んだ。

私はもう一度口を開いた。

   静かに流れる恋の歌。
   小さく儚く消えていく。
   人は脆く弱いけど、
   それでも淡く強いのです。
   運命なんてベタだけど、
   それでも信じていたいのは、
   きっとあなたが好きだから。
   君の笑顔が好きだから。
   永遠なんてないんだと
   はじめて知ったあの日から、
   僕の心に大きく笑う
   一輪の花がありました。
   それは君が植えた花でした。
   「サヨナラ」の代わりに
   「アリガトウ」
   一生分の心をこめて。
   大きな大きな笑顔を添えて。

君は小さく微笑んだ。

「ありがとう。」

そう呟くと君はそっと風になった。
私の笑顔と心を乗せてあなたのいる空へ高く高く舞い上がった。
そしてヒラヒラと手を振りながら
君は消えた。   

そっか、君はあの日の風だったんだ。
< 9 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop