月夜の天使
「加奈・・・」

「十夜、私の頭がおかしくなっちゃったのかな?」

「加奈、俺は・・・」

十夜は大きな両手で加奈の頬の涙をぬぐう。

十夜は瞬きもせず加奈の瞳をじっと見つめる。

十夜の切れ長な瞳に、かすかに涙が光った。

そっと・・・そっと十夜の唇が加奈の唇に近づいてくる。

加奈はその唇をただ見つめる・・・。

私、どうしちゃったの?

動けない・・・。

今は、苦しくて、動けない・・・!

十夜の唇が、加奈の唇にそっと重なる。

優しいキス。

十夜の唇は、愛して欲しい・・・そう言ってる。

今は・・・何も考えられない。

加奈はただ、十夜に身を任せ、目を閉じた。

月は、全てを見ている。

月は、全てを見てきた。

前世から続く月の恋人の逢瀬をただそっと照らしながら…。
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