月夜の天使
「ここ、だな」

1週間後、トオヤとカナンは美術館の前に来ていた。

今日が展覧会の初日。

ミズキ・・・ほんとうにあなたなの?

中に入ると、神秘的な照明が施された館内にはあちらこちらに天使の絵が飾られている。

「きれい・・・」

カナンはその美しさにため息をつく。

この展覧会は主に新進の画家の絵を集めていて、若い画家が多く参加していた。

「そういえば、ミズキって絵がうまかったよね。画家を目指して頑張ってるのかな?」

そう言ってトオヤの顔を見るカナン。

トオヤが突然立ち止まる。

「カナン・・・あれ・・・」

館内の一番奥、壁一面の大きなスペースにその絵はあった。

三日月の上に横たわる天使。

天使はまるで何も苦しみなど知らぬような無邪気な顔で眠っている。

題名は・・・『カナン』

カナンはゆっくりとその絵に歩み寄る。

全てを包みこむ優しさを秘めたその絵。

間違いない。

ミズキ・・・これは、あなたの絵だ!!

カナンの瞳から自然に涙があふれ出る。

トオヤがカナンの肩を抱いてその胸に引き寄せる。

「トオヤ・・・ミズキ、ミズキが生きててくれた・・・!」

「カナン・・・良かったな」

静寂の館内に、その絵はひときわ大きな神秘をまとって佇む・・・。


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