月夜の天使
「十夜!!」

瑞樹が十夜をにらみつける。

ほとんど見たことのない瑞樹の表情だった。

瑞樹は十夜を咎めるような表情で言った。

「それは言わない約束だ。力をコントロールできないのは加奈のせいじゃない」

「でも、女性として生まれることを選んだのは、加奈なのよ」

月野いずみが瑞樹をじっと見据えて言った。

「加奈、私は前世であなたに言ったの。あなたは唯一生まれ変わる性別までもコントロールすることができる。だから、男性に生まれなさいって」

「そしたら、あなたなんて言ったと思う?」

加奈は父の死の真実に動揺し、言葉を発することができなかった。

「私はどうしても女性に生まれたい。だからそれはできないって」

「その理由は、あなたと私ししか知らないわ。あなたは覚えてないでしょうけど…」

やめて・・・気が遠くなる。

私、なんにも思い出せないのに。

いやだ、もうなんにも聞きたくない!

加奈は両耳を押さえて目を伏せた。

その時、祭壇の横にひっそりとつぼみをつけている月見草が一斉に、ゆっくりと、開き出した。




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