月夜の天使
「奴らの姿はいろいろだ。加奈の頭の中に呼びかけてきたのは能力の弱い実体をもたない生命体だろう。しかし、突き落とすのは奴らには無理だ。」

立ち止まり、考え込む十夜。

「…美織とは直前まで一緒にいたんだな?」

十夜が確認するように加奈を見た。

「美織ちゃん?うん。お兄さんが迎えにきて橋の直前で別れたけど…」

「加奈、美織に気をつけろ」

「え?」

十夜の突然の言葉に、加奈は驚きを隠せなかった。

「なんで?あの時確かにそばには誰もいなかったのよ。美織ちゃんだって・・・」

「奴らの中にはあるレベルに達すると、やっかいな能力をもつものも現れる。人間の魂に入り込むんだ。俺たち月の一族のように魂に封印をかける能力があれば別だが、普通の人間にはまず無理だ。乗っ取られれば、良い様に操られ魂を食い尽くされる」

なんてこと・・・!!

「魂を奪われた人間にはある程度の能力が身につく。触らずにして川に突き落とすくらいは可能だ」

「もし乗っ取られてたら・・・美織ちゃんはどうなるの!?」

「・・・いずれ体は衰弱し、死に至る」

「!!!」

神様、月の神様。

美織ちゃんをどうか、お守りください・・・。


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