Summer memory
「なぁ、ちひろ。」
前を歩く背中に話し掛ける
「ちひろ。じゃなくてお兄ちゃん。ちひろって名前、あんま気に入ってないんだから。」
がしがしと首を掻く。ちひろの癖
「でも、その名前、親父がつけたんだよ?」
ずしり。と両手でちひろの持つエナメルバックに体重を掛けた。
でも、ちひろはそれに体重を預けてきたもんだから、少しよろけた
「…今親父の話とか、すんなって」
ちひろの横で母さんが鼻をすすっている。
涙腺ゆるいなぁ。もう歳か。
「…なんで?死んだから死んだ。それだけのことじゃん。もう、過去の話だよ。どうでもいい」
私の言葉に間髪を入れず、母が言葉をつなぐ
「ちせ!なんてこというの!!」
…母さんは嫌いだ。
親父が死ぬまでそんなこと思ったことなかったけど、最近やけにイライラする。
顔を見ると。