君がいたから

「あ、先輩!はい、そうです
 永美青くんです」
「そうか、よろしく青くん
 俺は三河常陸(ミカワ ヒタチ)三年生だ」

そういって、三河先輩は
俺に手を差し出した
少し戸惑いながら、俺はその手を握り返した

「よろしく、お願いします」
「じゃあ、俺はクラブ行って来るから」
「はいっ!頑張ってください」
「おう!」

上総の言葉に三河先輩は短く答えて部屋から出て行く

「かっこいいでしょ、常陸先輩」
「うん、そうだね」

照れたように笑って
話す上総、俺の知らない表情

ああ、そうか
容易にわかる

「好きなんだね、上総。先輩のこと」

言ってから後悔した
馬鹿だ、墓穴掘るにもほどがある

「な、なんでっ?///」
「全部顔に出てる」

この数日で
色んな上総を知ったつもりだった
大人びてるけど
ふとした瞬間に子供っぽく見える彼女
やっと、愛しい存在だと自覚できたのに
敬語じゃなくてタメで話してくれるようになったから
少しは距離が近づいたんじゃないかって
そう思ってたのに

全部全部ただの自惚れ

「好き、だよ」


窓の外には
一番星が一つ
酷く儚く輝いていた
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