君がいたから

季節は秋
少し肌寒くなってきた今日この頃
俺の気持ちは、はっきり言って
とてつもなく暇を持て余していた

時は放課後
俺は帰宅部なので
放課後は大抵校内をうろついているか
すぐに家に帰って寝たりしたりしている

「なんか良いことねーかな・・・」

そう独り言を呟いて
音楽室の前を通ったその時・・・




『私を見つけて
 私はここにいるよ
 誰かに気付いてもらえるその日まで』



歌が聴こえた
それに、ピアノの音も



『傍にいて どんな時も傍に
 貴方がいれば どんなことも乗り越えてみせる』

それはとても儚く
だからこそ美しい歌声

俺はドアの窓から部屋の中を見た

其処に居たのは一人の少女
すっと伸びた茶色が少し混じっている黒い髪の毛
すらりとまっすぐ伸びた背筋
ピアノも歌声も彼女のものか・・・

"ガタッ"

俺の足がドアにあたり音を立てる

――・・・しまった
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