君がいたから
「誰、ですか?」

彼女は歌を止めてこちらに視線を向ける
彼女の黒い瞳が俺の茶色の瞳とあった

「・・・入ってきてください」

彼女はリンとした声で俺にそう言った
ドアを開けて言われたとおり中に入る

「ごめん・・・覗くつもりはなかったんだ・・・
 ただ、校内をうろついてたらキレイな歌が聴こえたからつい・・・」

そういった後
本当にごめん、と深々と頭を下げて謝った
そうしたら、彼女がすぐ傍によってきて
笑って、俺の頬に両手で触れ、ゆっくりと顔を上げさす

「いいんですよ
 あ、そうですね、許すかわりに明日からもここに来てくれます?」
「え・・・」
「丁度、唄の感想が聞ける人が欲しかったんです」
「あー・・・うん、わかった。そう言う事なら・・」
「ありがとうございます」

笑顔になる彼女
つられて俺も笑う



「あ、名前は?」
「私?」
「お前以外にこの教室に誰がいる?」

俺がそう問いかけると
彼女は座っていた机から降りると
くるりと俺のほうを振り向いた
< 3 / 72 >

この作品をシェア

pagetop