君がいたから
「別に、気にしてないから」
「でも・・・」
「かずっ!!」

先輩が叫ぶように言葉を発した

「お前はもう帰っていい」
「え、あ・・・・はい」

先輩の言葉に
上総は少し戸惑いながらも首を縦に振った

そして、鞄を手に
彼女は保健室を後にした





・・・・静かな部屋の中
風の吹く音だけが響いた

『・・・・』

上総が帰ってから
数分、ずっと沈黙が続いたまま

「・・・悪かった」
「へ・・・?」

突然声をかけられて
間抜けな声が口から漏れる

「無理にピアノ弾かせて悪かった」
「いいですよ、気にしてません
 それに・・・今日は弾ける気がしたんです」

上総がいたから
なんとなくあの過去を乗り越えることができる気がした

無理だったけど・・・・

「そうか、有難う・・・
 そろそろ帰るか」
「そうですね」

ベットから降りて
スリッパを履いて
先輩が取ってくれた
鞄を「有難う御座います」と言いながら受け取った
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