嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


私は1万円を手に
ガラス工芸のお店に入った。


七色に光る
ステンドグラス手に取り、

光りにかざしてみる。


その横でカメラが回り、

私の笑顔一つ一つを捉えていく。



「葵ちゃん?

それは自分のお土産に買うのかな??」



レポーター風に話しかけるカメラマンに、

「これは友達のお土産です!」と答えた。



紗希には、
いつももらってばかりだから、

こういう時にお返ししたい。



私は紗希と健太のお土産を選び、

自分に何を買おうか……
見ていると、

綺麗なペンダントを見つけた。


シルバー加工の

ハート型のペンダント。



周りにはいくつものガラスが散りばめられている。



「綺麗……」



素の声と共に値段を確認する。



6200円。


高い!!


紗希と健太の分を買ったから、
足りないと、

元に戻そうとすると、

「葵ちゃん、
カメラに向かって

“これ、買って♪”って可愛く言ってみて」



「どういうことですか??」



「そういう表情を撮りたいんだ」



緒川さんの指示は分からないときがある。


でも言われた通り、

「これ買って」と
カメラに向かって言ってみた。



「んん……、

もっと可愛い顔で言ってくれるかな??」



「あ、はい……」



こんなものを撮ってどうするんだろう??


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