嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



水の音と車の走る音、

下町らしい豆腐屋の笛の音色……

色んなものが
混ざり合った川原で、

力いっぱい抱き締めた。



「……お姉ちゃん、痛いよ」



小さな声で呟く健太。



「あ、ごめん……」



こんなとき、
何て声かけたら良いのだろう??



どうして言わないの?って、
怒るべき?



違う……



だって、
私もいじめられたことを

誰にも言えなかった。


苦しくて、

悲しくて、

悔しいのに、

誰にも言えなかった。



いじめられることが
恥ずかしいと思ったし、

誰も助けてくれないと思った。



健太も同じ気持ちだったんだよね。



私も“貧乏”という言葉で罵られてきた。


“貧乏”という言葉は、

何百回も何千回も
浴びせられた

敏感な言葉になっていた。



私と健太は
どうして普通の家庭に

生まれなかったのだろう。



神様は不公平だよね。


何不自由なく生きている子も
たくさんいるのに、

生きて行くだけで

精いっぱいな私たちだっている。



「健太、帰ろう?」


「うん……」



私たちはゆっくりと腰を上げ、

流れる川を見つめた。



どこにでもあるような小さな川。


水面に、
夕陽がオレンジ色に照らされ
キラキラと光っている。



……私たちは
何のために生きているんだろう。


手を強く握る私は、
そんなことを思った。

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