Hateful eyes ~憎しみに満ちた眼~
ハリーの顔がみるみる青ざめていく。それもそのはずだ。目の前で、ただ持っていただけのコップが何の前触れもなく突然割れたのだから。
言葉にならない驚きを隠せず、金魚のように口をぱくぱくさせているハリーを無視してサラは話を続ける。

サラ「どう?わかった?これが私の眼の力……。憎むものが人だろうと物だろうと関係ないわ」

これでハリーもサラを化け物扱いすることだろう。
いくら信じると言っても、ハリーも所詮人間。信じ難いことや、自分では認識できないものは極端に拒絶する。
でもいいのだ。始めから覚悟していた。
たとえ偽りの言葉でも、あの優しさは本物だったのだから。
さぁ、次にハリーが口を開けた時は、間違いなく「出て行け化け物!」と───。

ハリー「あ……あぁ……俺のコップ……」

サラ「へ?」

ハリーの口から出たのは侮蔑でも何でもなく、とてつもないほど意外な言葉だった。

見れば、サラが眼の力で割ったコップはハリーが持ってきて置いておいたハリーの愛用のコップであった。



ハリー「……なるほどね。つまり君と一緒にいると俺まで危なくなるかもしれないってことか」

サラ「それは……」

確かに、サラに関わって不幸な目にあった人は多い。
医者しかり、いじめっ子しかり、父親しかり、そして、母親しかり。
サラは改めて自分の立場を認識する。自分は、周りの人を不幸にするような力でもあるのかもしれない。
そんなサラの心配をよそに、ハリーはとんでもないことを平気で言ってのけた。

ハリー「ま、いいんじゃないの?そういうのも。スリルがあって」

ハリーの発言にサラは、神様はどうしてこんな人を作ったんだろうと答があればどうしても知りたくなってしまった。
< 25 / 90 >

この作品をシェア

pagetop